外国人を中途採用するときには注意点があります
ある会社が求人広告を出すと、転職希望だという外国人が面接に来ました。
日本で大学を卒業しており、受け答えもしっかりしていて、とても好印象です。
「外国人が働くにはビザがいるんだっけ…」と面接担当者は思いました。
そこで外国人に在留カードを見せてもらいました。
在留期間は3年で期限まで1年以上あり、在留資格のところには「技術・人文知識・国際業務」と書いてあります。外国人も「自分は働けるビザを持っていて、期限もまだあるので日本の会社で働けます」と言っています。
そのため、会社は安心して外国人を雇用することに決めました。
さて、これで本当にその外国人を雇用しても法律上問題ないと言えるのでしょうか。
一見きちんと確認してから雇用しているように見えますが、大切なことを確認できていません。
実は就労ビザを持っているからといって、どんな仕事でもできるわけではないのです。
転職者を雇用するときは、前職と自社での業務内容が重要なポイントとなります。
今回は就労ビザを持った外国人が転職するときの注意点や必要な手続きについて、専門家である行政書士が解説していきます。
知らない間に法律違反を犯してしまうのは、会社にとっても外国人にとってもデメリットしかありません。
是非この機会にご一読ください。
就労ビザは日本で自由に働ける権利ではありません
「就労ビザを持っている外国人であれば、採用しても働いてもらっても問題ないですよね?」
このようなご質問をいただくことも多いのですが、それだけでは判断することは難しいです。
就労ビザは、外国人本人が学歴や実務経験などの要件を満たしており、勤務先の会社での業務内容が就労ビザの活動に該当すると認められて、許可がおりているものになります。
転職に限らず、配置転換・部署移動などの場合も、許可を得ていない範囲の業務内容をおこなわないように注意が必要です。
就労ビザを持っていても不法就労になる!?
「外国人の不法就労」と聞くと、働けるビザを持っていないケースを想像される方も多いと思います。
しかし、就労ビザを持っていても決められた活動範囲を超えて働いてしまうと不法就労になることがあるのです。
<摘発事例>
・翻訳・通訳業務に従事するとして在留資格「技術・人文知識・国際業務」の許可を得た人材会社から派遣された外国人を許可の範囲外の業務である工場で働かせたとして、派遣先の会社を不法就労助長罪で書類送検 ・技能実習の在留資格を持つ外国人を決められた受入企業以外の会社で働かせたとして、人材派遣会社の社員を不法就労助長罪で逮捕 |
このような事例もありますので、外国人を雇用する会社には決して他人事ではありません。
不法就労がもらたすデメリット!
不法就労は外国人のみならず、事業主も処罰の対象となり、法律を知らなかっただけだとしても、罰則は平等に適用されます。
不法就労が発覚すれば退去強制の対象となり、外国人は在留資格を失って帰国しなければいけなくなります。処分を受けた会社は、外国人の雇用が一定期間できなくなり、既に働いている他の外国人の方がいれば転職をしてもらわなければいけません。今までの採用・教育コストも無駄になってしまいます。
入管法違反で報道されれば対外的な信用を損なってしまいますので、会社の経営にも大きな影響を与えます。不法就労は関わった全ての方にデメリットをもたらす行為です。
不法就労助長罪→3年以下の懲役又は300万円以下の罰金
出典:出入国在留管理庁 不法就労防止にご協力ください(リーフレット)
では、法律違反を防ぐためにはどうすればいいのでしょうか。
会社側も外国人雇用に対する知識をつけて、しっかり確認することが大切です。
自社の業務内容は就労ビザの活動に該当しますか?
まずは自社の業務内容が就労ビザの活動に該当しているかを確認しましょう。
例えば代表的な就労ビザである「技術・人文知識・国際業務」はエンジニア、翻訳・通訳、海外取引業務などが該当します。単純労働に分類される業務は該当しません。
もし就労ビザに該当する活動でなかった場合は、日本人や就労制限のない在留資格を持つ外国人の雇用を検討することになります。
出典:出入国在留管理庁 新たな外国人材の受入れ及び共生社会実現に向けた取組
雇用する外国人の在留資格・在留期限
面接の際に在留カードに記載してある「在留資格」と「在留期限」をチェックして、適法に在留していることを確認しましょう。在留期限が近付いていたら、更新等の手続きを急ぐ必要があります。
前職での業務内容
外国人が前職でどのような業務内容を担当していたのかをご確認ください。
技術・人文知識・国際業務で働いていた外国人が、転職先でも同様の業務に従事する場合は、就労ビザの範囲内の活動として、認められる可能性が高いです。自社での業務内容が外国人の持つ就労ビザの活動に該当しているか確認してみましょう。
<例>技術・人文知識・国際業務ビザで「海外取引業務・通訳」を担当していた外国人が転職先の会社でも「翻訳・通訳」業務をおこなう |
現在持つ就労ビザの活動内容と違う場合は「在留資格変更許可申請」をおこなって、許可を得る必要があります。
<例>現在「技術・人文知識・国際業務」ビザで営業をしている外国人が転職先の製造会社で「特定技能」ビザで働きたい |
※必ず「在留資格変更許可申請」が必要なビザも!
在留資格「高度専門職」や「特定技能」等で働いている外国人は、転職先で同じ業務内容に従事するとしても、必ず在留資格変更許可申請が必要になりますのでご注意ください。
技能実習生は原則的に転職不可となっており、受入企業でない会社が働かせることはできません。
転職する際に必要な入管手続き
所属(契約)期間に関する届出を出しましょう
転職する外国人の方には共通して必要な届出があるので、忘れないようにご注意くださいね。
就労ビザで在留する外国人の方は、勤務先が変わった場合は14日以内に「所属機関に関する届出」を出入国管理局に提出する義務があります。退職時と再就職時それぞれ必要となります。
同時期の場合は1枚にまとめて届出をすることができます。
もう14日過ぎてしまったという方は、気付いたら早急に届出をおこなってください。
この届出はインターネット、郵送、入管窓口で提出することができます。
詳しくは出入国在留管理庁のホームページをご覧ください。
出入国在留管理庁ホームページ「所属機関等に関する届出手続き」
転職先で働くことが適法か確認する方法はないの?
就労資格証明書の申請をおすすめします
就労資格証明書って何?
「就労資格証明書」とは、転職先の業務内容が就労ビザの活動範囲内であることを確認する申請をして、認められた場合に交付される証明書のことです。外国人の方がおこなっても良い「就労活動」について証明してくれます。
転職後の業務内容が変わらないのであれば、在留資格変更許可申請は不要です。しかし、現在の就労ビザは、転職前の会社で働くことを前提に審査されて許可されています。
本人の学歴・経歴と勤務先での業務内容に関連性があるか、会社の規模や安定性についても審査されます。そのため、転職先でも必ずしも就労ビザの該当性があるとは限らないのです。転職から更新までに期間が空く場合は、就労資格証明書の申請をおすすめしています。
就労資格証明書のメリット
転職後の在留期間更新申請の際に、転職先での活動が就労ビザの範囲内ではないと判断された場合には、更新不許可となってしまうこともあります。(※就労資格証明書の取得は更新を保証するものではありません。)
そうなれば転職から更新までに働いていた期間について、就労ビザの範囲外の違法な活動をしていたことになってしまう可能性があります。
せっかく入社して働いてくれている外国人の雇用も続けられなくなってしまいます。
「会社名」と「活動の内容」が記載される就労資格証明書の取得は、自社での外国人の就労が適法であることを確認するには有効な手段です。また、在留期間更新申請の際に提出する書類が少なくなり、手続きが簡易化されます。
就労資格証明書のデメリット
就労資格証明書の取得には、書類作成や書類収集をおこなって入管に申請に行かなければならないので、手間と時間がかかります。また、行政書士などの専門家に依頼する場合には、費用が発生します。
就労資格証明書の申請方法
就労資格証明書の申請は、入管の窓口でおこないます。
<必要書類の例>
申請人 | 企業 |
・就労資格証明書交付申請書
・在留カード・パスポート(申請時に原本の提示) ・経歴書 ・大学や専門学校等の卒業証明書・成績証明書 ・資格の合格書などの写し ・前職の退職証明書 |
・履歴事項全部証明書
・直近年度の決算報告書の写し ・前年分の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表(受付印のあるものの写し) ・会社パンフレット ・雇用契約書の写し ・雇用理由書(転職経緯、業務内容、1日のスケジュール等を記載)
|
※提出する書類については、会社の規模や状況により変わります。記載している以外の書類を求められることもあります。
※就労資格証明書交付申請書は出入国在留管理庁ホームページからダウンロードできます。
在留期限が近い場合は更新申請を
在留期限の3か月前から在留期間更新申請の受付をしてもらえます。
転職から在留期限まで期間が短い場合は、在留期間更新許可申請をおこなうことになります。就労資格証明書を取得せずに転職後はじめて更新手続きをする際には、新たな会社での業務内容等を改めて審査されることになります。そのため、新規で就労ビザを取得するときと同様の書類が求められます。
在留期間更新許可の申請方法
在留期間更新の申請は、入管の窓口でおこないます。
<必要書類の例>
申請人 |
企業 |
・在留期間更新許可申請書
・在留カード・パスポート(申請時に原本の提示) ・住民税の所得課税証明書及び納税証明書 ・経歴書 ・大学や専門学校等の卒業証明書・成績証明書 ・資格の合格書などの写し ・前職の退職証明書 |
・履歴事項全部証明書
・直近年度の決算報告書の写し ・前年分の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表(受付印のあるものの写し) ・会社パンフレット ・雇用契約書の写し ・雇用理由書(転職経緯、業務内容、1日のスケジュール等を記載)
|
※提出する書類については、会社の規模や状況により変わります。記載している以外の書類を求められることもあります。
※在留期間更新許可申請書は出入国在留管理庁のホームページからダウンロードできます。
転職時のビザ手続きのまとめ
ここまでお読みいただきありがとうございました。記載したとおり外国人の転職者を雇用する場合には、就労ビザの範囲内の業務であることを確認する必要があります。就労資格証明書や在留資格更新の際には、新たな会社での業務内容の説明書など様々な書類を用意しなければいけません。
入管法の確認も必要となり、お手続きには時間と手間がかかるのではないでしょうか。
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